眠り姫は王子に愛される
「大丈夫?」
「平気だよ」
「…」
心配性な優しい志緒は、額と額をそっと合わせた。
突然の近さに呼吸の仕方を忘れてしまう。
香るシャンプーは、私を安心させる。
毎晩包まれる香りは眠りへ誘う。
けれど、今はそれらも全て距離の近さを物語る要素でしかない。
「し、お?」
「んー、やっぱりちょっと熱くない?」
「熱くないよ!気のせい!」
私の高さに合わせて屈んだ志緒の肩を掴んで、顔が見える位置にまで押す。確かに私の顔は熱いだろう。離れたら顔の赤さだってバレてしまう。
「あの、教室だから、ね、恥ずかしい、から…」
それでも、この近すぎる距離の方が心臓が煩くて仕方ない。早すぎる鼓動と熱を落ち着かせたくて顔を伏せながら何とか志緒に伝える。