眠り姫は王子に愛される





「百合ちゃん、お手洗いに行ってから教室に戻るね」

「分かった、先に戻るね」



昼食を百合ちゃんと2人で済ませた後、お手洗いに向かう。その途中、



「あら、天瀬さんごきげんよう」

「ご、ごきげんよう…?」



不意に声をかけられた。確か隣のクラスのご令嬢。

一度合同授業でグループを組んだことがあるけれど、対面で話すのは初めてだ。
優雅な笑みに優雅なお辞儀、立ち振る舞い全てにお嬢様の気品を感じる。


圧倒されそうになるのはどことなく強気な視線を感じるからだろうか。



「以前、合同授業でグループをご一緒した際に発表した資料の件でお話がございますの。お昼休みもあまり時間が残っておりませんが、お付き合い戴けませんか?」

「はい、大丈夫ですよ」



気品を感じさせるほどの笑顔は作れないけれど、見習って私なりの笑顔を見せる。


すると、崩れない完璧な笑顔に少しだけ、影が差した気がした。




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