眠り姫は王子に愛される
「だから可愛すぎるって」
「そんなこと、ないよ」
「他の男子にもそんな表情見せるつもり?」
「えっ…しないよ!それに、抱きしめる男の子は志緒しか居ないもん」
そうだよ、普通付き合ってもいない男女がハグをすることなんてないんだから。
寧ろ、どうして志緒は私にキスやハグをするんだろう。紳士的な彼なら感情を切り離してできちゃうのかな。
と、他の女の子を抱きしめているところを想像してみる。けれど、軟派なイメージがついただけで勝手に印象が悪くなって終わった。
「じゃあ、湖宵は僕からしかハグされちゃダメだよ」
「されるわけないよ…」
「僕の可愛いお姫様はすぐに狙われそうだから不安だよ」
「志緒…」
「ん?」
「気になってたんだけど、その、お姫様って誰?」
おずおず、気になっていたことを訊いてみる。確か私が寝惚けている時から眠り姫とかお姫様とか言っていたけれど。私はどう見ても一般人で、志緒のお姫様に相応しい人物とは到底程遠い。
なのに、志緒は私の質問に驚いてから、呆れたように溜息をつく。
その反応に、早々に嫌われてしまったのか、と不安になり、貰ったばかりのスカートを皺が付くほどぎゅ、と握り締めていた。