眠り姫は王子に愛される





一般人の私はともかく、次期社長候補として多くの人間を引っ張っていく存在としてたくさんの人から期待を寄せられている志緒は、感情を優先させるばかりの立場では居られない。



「湖宵ちゃんはこのままだと…」

「ちょっと、元の生活に慣れないだけだから」

「実家よりも居心地がよかったってことでしょ?」

「そ、んなことは…」

「湖宵ちゃんは、久住君の傍に居るべきだと思う!」



きゅ、と手を握られ強く断言される。

私の視界が揺れているから定かではないけれど、百合ちゃんも泣きそうになっている?
握られた白くて細い手が温かくて、少し安心できた。



「自分で決めたことだから。大丈夫にしてみせるよ」

「…じゃあ、せめて今日は帰った方がいいよ」

「え?元気だよ?」

「そんなに真っ青な顔して言われても説得力ないよ!」



保健室に行くまでもない、と言い切られて登校したばかりの学校から帰ることになってしまった。




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