眠り姫は王子に愛される





すぐ近くに居る人と、もう1人命令された人。

その人は慌てた様に動いているのが音で感じられる。


何をしているんだろう、何をするんだろう。
視界が遮られている布は涙を吸い込み、どんどん冷たくなっていく。

まるで、心と思考がリンクしたかのように。


もう1人、近付いたかと思うと私の手を取り硬い板に指を押し当てた。指紋認証で開くスマホで私の個人情報は晒される。


すぐに連絡先を辿った男は、1人1人名前を読み上げていく。

怖くて、震えが止まらなくて、友達みんなに危害が及ぶのが嫌で。
誰の名前を呼ばれても同じように声を出せないままでいた。



「えーと、久住、しお?」



ぴたり、震えていた身体が固まる。


名前を聞くだけで短い期間なのに思い出が脳裏に走った。




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