眠り姫は王子に愛される
それを見た志緒はそっと手を取り、また手の甲にキスをする。
「不安にならないで。僕のお姫様はずっと湖宵だけだよ」
「……私が、お姫様??」
「そ。湖宵だけしかいらない」
真っ直ぐに見つめる瞳に嘘はなく、透き通ったように綺麗で照れてしまう。志緒の顔を見ていられなくて、ぱっと下へ俯いても、すぐに顎を掬われて目線を合わさざるを得なくさせられる。
「~~っ、志緒っ」
「なあに?」
「意地悪…」
「湖宵が可愛いからずっと見てたい」
「恥ずかしいよぉ…」
綺麗な顔は見慣れなくて。
次第に恥ずかしさが限界に達して、自然と潤んでくる瞳。滲む視界の向こうで志緒は優しく笑っている気がする。
「やっぱり可愛いお姫様」
甘い言葉を難なく口にして、舌で涙を掬い取る。
「涙まで甘いなんて湖宵は不思議だね」
涙は共通して塩っぱいはずだよ?
そんな疑問を持ったところで、
「着いてるなら早く入って来てください」
後ろから呆れた声が。
でも、振り返るよりも先に何故か志緒に抱き寄せられて、見ることが出来ない。