眠り姫は王子に愛される





「お、良い反応すんじゃん」

「こいつにかけるか」



でも、顔も知らない明らかに悪事を働こうとする人から聞きたい名前ではなかった。

私は邪魔になりたくなくて、離れたはずなのに。結局迷惑をかけることしかできないの?


小さなタップ音と、それから聞こえるコール音。

どうか、出ないで欲しいと願いながら。息を潜めて耳を澄ます。



「あ、もしもし~」



でも、残念ながら願いは聞き届けられず。
これから起こることを想像して、また涙を流すことしかできなかった。


電話越しに聞こえる声は焦ったような急ぎ足で。
自分の嗚咽が煩くて、言葉は聞き取れないけれど早口な志緒は聞いたことがない。別人だろうか?




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