眠り姫は王子に愛される





目の前の人たちは雰囲気からもにやついているのが分かって、不快さが増した。

そんな男たちは機嫌が良さそうに電話越しの相手を煽りだす。


志緒がそんな簡単な挑発に乗るとは思えないけれど。


今まで何人もの大人と渡り歩いてきた人。
もっと巧みな言葉で陥れようとした人も居たに決まっている。
こんなストレートな脅しに屈するはずがない。


「顔はまあまあだし、スタイルも…悪くねえな。全然ヤれる」

「~~」

「何もしないうちに助けに来られるといいねー」



はずがないのに。
電話越しで聞こえた声は早口で、明らかに焦っていた。


終わった電話に満足した男たちは、覗き込むように近づいておもむろに触れて来る。


耳元で囁かれる声は何も頭に入って来なくて、些細なのか過大なのか不明な問いかけにはただ無理矢理頷かされる。

理解出来ず、声も出せず、震えが止まらないだけの壊れた人形のような。助けを求めることも、助けてもらうために役に立つことも、何一つ出来ない。



気持ち悪い、気持ち悪い、触らないで、話しかけないで、気持ち悪い―――――




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