眠り姫は王子に愛される
夢のなかを彷徨うような
*
——————……
「こよいちゃん!」
幼い可愛い声が拙く私の名前を呼ぶ。
何となく視線が低い。
呼ばれた声に振り返って、声と同じく可愛く整った顔の男の子を見つめる。
同じ高さの視線は簡単に目を奪って、離せなくなる。
にこり、綺麗な顔が微笑むと天使のように優しくて儚い。
私はこのまま消えてしまうのではないかと不安になって、思わず手を繋ぐ。
すると、にこりと微笑んだ笑顔がもっと濃くなり、向日葵の様に咲き誇る。
儚さが消えたことで安心し、私も漸く笑顔を返すことが出来た。
「———くん」
幼い私は確かに名前を呼んでいるのに、その名前が聞き取れない。
それでも、彼は「なあに」と拙く返してくれる。
声が聞けるだけで幸せだと思える。
大した話をしていなくても、自然と笑顔を見せてしまう。
ずっと、この優しい世界でにこにこと笑っていられたら。
そう願わずにはいられない程、甘くて明るくて澄んでいる。