眠り姫は王子に愛される





湖宵(こよい)ちゃんは可愛いね」

「———くんはかっこいいね」



合言葉のように顔を見合わせては鏡合わせのような台詞を呟く。

それは魔法のように優しくて心がぽかぽかする言葉。



「ぼくは湖宵ちゃんを守る王子様になるね」

「じゃあもっとかっこよくなるんだね!」

「だから湖宵ちゃんはぼくだけのものでいてね」

「わたしは———くんのもの?」

「だめ?」

「ううん、だめじゃないよ」

「じゃあ約束」

「うん、約束」



小さな小指を絡ませて、2人だけの小さな約束を交わす。


夢物語だと知りながら、どこか懐かしさを感じる温かさに思わずふにゃり、顔が緩む。


柔らかい陽だまりの下で、綺麗な薔薇に囲まれて、お姫様になったような気分。

きっとこれが幸せなんだと実感できるくらい。


ねえ、私は誰と一緒に居るの———?




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