眠り姫は王子に愛される
「……志、緒…」
拙く零れた名前をきっかけに意識は浮上して、ふわふわと思考が夢と現実を彷徨う。
回らない頭でぼうっと感じるのは、最近は寝つきが悪すぎて常に喪失感に襲われていたから、こんなに当たり前の感覚が久しぶりだということだった。
ぬくぬくの空間
開かない眼
甘い香り
優しく撫でてくれる手。
全てが久々で、それと同時に様々なシーンが呼び起こされる。
どんな時でも私のことを1番に考えてくれる優しすぎる人。
絶対に私を守ってくれようとする過保護な人。
いつも余裕そうで、綺麗な笑顔を見せてくれる人。
そんな素敵な人が私だけを見つめてくれて、たくさん愛を注いでくれる。
私には勿体ないくらいの人だけれど、もう離れられないくらい大好きになってしまった。
離れられない、離れたくない、志緒が居ないと夜も眠れない。
志緒が居るなら、夢の中よりも眠ることよりも現実世界がきらきらと輝く。