眠り姫は王子に愛される
泣きはらした顔を見てもやっぱり「可愛い」と呟く。
志緒の視界フィルターは大分おかしい。
でも、変わらない彼が愛おしい。
離れたくなくて先程まで抱きしめてくれていた腕に触れる。
少しだけ動かし辛い感覚に痺れが抜けきっていないことを悟った。
が、そのままそっと下ろして行き、私よりも大きな手をきゅ、と握った。当然のように握り返してくれることも嬉しい。
「志緒、えっと、私ね、志緒のことが大好き」
「……湖宵?」
突然の発言に目を少し大きく開いて驚く様子の志緒。
あまり見れない表情に漸く涙は落ち着きを見せる。
ちゃんと耳を傾けてくれる優しさもお砂糖のように甘く降りかかってゆるゆると口元が上がってしまう。
「志緒の思う好きとは違うかもしれない。
私は、婚約者になって、志緒と一緒に過ごすようになって、たくさん優しさをもらって、とびきりの甘さももらって、図々しいけれど、お姫様になれたみたいだったの。
さらに図々しいことを言うと、私は志緒のお姫様になりたいの」