眠り姫は王子に愛される





私のわがままを試すように、志緒は綺麗な顔を少し歪めて覗き込む。



「…知れば、やりがいばかりを感じられるわけじゃないって思うよ?」

「いいの、上に立つ人には上に立つ理由があって、その分抱えるものがあるはず。それを少しでも分け合いたいの。」

「湖宵には、黒いところは見せたくないんだけどな…」

「どうして?」

「嫌われたくない、湖宵の王子様でいたいから」



真剣な瞳に捕らわれながら、私を遠ざけようとする理由が臆病なもので、私はぎゅ、と志緒を抱きしめる手で服を掴んだ。


ーーー私の意志はもう変わらないって伝えたい。



「嫌わないよ。
どんな志緒を知っても、辛いことには心を痛めているはずだから。平気なフリをしても、私だけは知っていたい。

もし、本当に悪いことをしても平気になってしまったら、怒るかもしれないけど、でも、嫌いにはならないよ」



精一杯の想いを伝えれば、泣きそうな顔で笑う志緒がいて。その表情を見て私も泣きそうになってしまった。


今までもこれからもたくさんの責任を負いながら務めを果たす。
時には会社を守るために冷酷と言われる判断を下すこともあるかもしれない。


どんな時でも私は志緒の味方でいる。
いつだって無条件に甘やかしてくれる志緒が甘えたい時に甘えられる存在でいたい。
大丈夫と言って背中を撫でられる存在でいたい。


嫌いにはならないから、信じて欲しい。




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