眠り姫は王子に愛される
「ここが教室です。もう分かってると思うけど、久住くんも同じクラス」
「よろしくね」
「あ、うん!志緒が居てくれるなら安心かも」
「タイミングとしてはクラスで輪ができてはいますが、2学期初日とスタートとしていい日なのできっとすぐに馴染めますよ」
綺麗な笑顔を浮かべる東堂先生は担任としてクラスを好きそうなことが伝わってくる。きっといいクラスなのだろう。
「はい、久住くんは先に教室に入ってください。特別に遅刻扱いにはしないので」
「ありがとうございます。じゃ、すぐに来てね、湖宵」
ぽん、と頭を撫でてから志緒は教室へ入って行った。
志緒が居なくなった途端、教室の扉が途轍もなく高い壁に見えて怖くなる。志緒だって今日出会ったばかりのはずなのに変なの。
ふわふわとここまで来たけれど、思い出すのはこの学校の優秀さ。家柄が素晴らしいだけでなく、文武両道も顕在している。
何もかも私には足りていなくて、たとえクラスメイトが優しくても授業についていけるのか、会話を理解できるのか、不安が次々に襲ってくる。
「天瀬さんが心配することは何もありませんよ。困ったことがあれば頼ってください。その前に久住くんが気付くでしょうが」
やっぱり綺麗な顔で微笑む先生は、余裕そうだった。