眠り姫は王子に愛される
「じゃあ帰ろうか」
「うん!」
教室を出てからまだ慣れない校舎内を志緒にくっついて歩いていく。隣を歩いていて感じる優雅さが王子様のようで。
周りからの視線が痛いのは勘違いじゃない。
みんなも志緒に見惚れている。男女問わず、志緒の格好良さは伝わる。
「はーあ、」
「どうしたの?」
気付けば繋がれていた手を揺らして、隣を見上げる。うん、やっぱり格好良い。
分かりやすく溜息を零した私に顔を向けて、揺れながら繋がる手に力が篭もる。
「志緒が格好良すぎるせいで、どこを歩いても注目されちゃう」
「今朝も言ったけど、僕じゃなくて湖宵を見てるんだよ」
「もう!スマートにお世辞まで言うの反則!」
ぷんっ、と軽く怒った素振りを見せても、にこにこ笑って「本当のことだよ」と焦る様子を見せない完璧王子様。
「(湖宵の可愛さは僕だけが知っていればいいよ)」
「(そのためのコレだし)」
心の中でそっと下心で湖宵を見る周囲を睨み、繋いでいた手を恋人繋ぎに変える。
少し不思議そうにした彼女は、またすぐに可愛らしい笑みを浮かべて揺らした。