眠り姫は王子に愛される
現実が目まぐるしく変わるので、受け入れようと思考する度に信じられない。
*
繋いだ手はそのままに志緒と一緒に帰路に就く。
そして、いつも通り自分のお家に帰るはずだった。
なのに、
「志緒様、湖宵様」
帰り道の方向へ足を向けると、呼ばれた名前。
……って、湖宵様?そんな風に呼ぶ人は知らない。
でも、志緒と一緒に呼ばれたので真正面の声がする方を見る。
目の前には私としっかり目が合ったまま立つ黒服の男性。
「おかえりなさいませ、志緒様、湖宵様」
「……どういう状況?」
ツンツン、繋ぐ手とは反対の右手で志緒の袖を引っ張る。
「何が?」
「いや、えっと、この方は…」
チラリ、視線を向けるとやっぱり目が合う黒服さん。
「申し遅れました。私は久住家の運転手をしております、千賀と申します。」
恭しいお辞儀をされたので、つられてお辞儀。
「あ、天瀬湖宵です!」
「存じ上げております。それではお乗りください」
促された先には今朝とは違ってコンパクトだけれど、やっぱり高級感は漂う車。
そういえば、今朝も運転してくれてた人か。後ろ姿を見て漸く思い出す。