眠り姫は王子に愛される
夢か現か





*



チチチチ……


遠くで小鳥の鳴き声が聞こえる。


あー、やだな。
段々と覚醒していく意識を浮上させたくなくて、目は閉じたまま。さっきまで優しい夢の中に居たのに。



「湖宵ー!起きなさーい!」



遠くでお母さんが呼んでいる気がする。
ふわふわとぼんやりした意識の中、身体を動かしたくなくて、呼ばれる声をスルーしたまま眠り続けていると。



「湖宵、起きて」

「…やだ」



とうとう誰かに身体を揺すられる始末。
返答を出来る程度には夢から覚めているのに、やっぱり起きたくなくて目は閉じたまま。


だって、私は眠ることが大好きだから。


眠ることを生活の何よりも優先させたいから、起きる瞬間なんて来なくていい。寧ろ嫌い。


だから私を目覚めさせようとする人も好きじゃない。



「湖宵は眠り姫だね」

「んー」



眠り姫。そういえばそんな風に呼ばれているような。
目が覚めていても、未だ働かない頭は使い物にならず。ただ、眠り姫になって、ずっと眠っていられたらいいのに、と思った。




< 2 / 159 >

この作品をシェア

pagetop