眠り姫は王子に愛される
夢か現か
*
チチチチ……
遠くで小鳥の鳴き声が聞こえる。
あー、やだな。
段々と覚醒していく意識を浮上させたくなくて、目は閉じたまま。さっきまで優しい夢の中に居たのに。
「湖宵ー!起きなさーい!」
遠くでお母さんが呼んでいる気がする。
ふわふわとぼんやりした意識の中、身体を動かしたくなくて、呼ばれる声をスルーしたまま眠り続けていると。
「湖宵、起きて」
「…やだ」
とうとう誰かに身体を揺すられる始末。
返答を出来る程度には夢から覚めているのに、やっぱり起きたくなくて目は閉じたまま。
だって、私は眠ることが大好きだから。
眠ることを生活の何よりも優先させたいから、起きる瞬間なんて来なくていい。寧ろ嫌い。
だから私を目覚めさせようとする人も好きじゃない。
「湖宵は眠り姫だね」
「んー」
眠り姫。そういえばそんな風に呼ばれているような。
目が覚めていても、未だ働かない頭は使い物にならず。ただ、眠り姫になって、ずっと眠っていられたらいいのに、と思った。