眠り姫は王子に愛される
朝にリムジンを引き連れてきたことといい、志緒は一体何者?
とはいえ、志緒のお仕えの人なら警戒心を解いても大丈夫か。
……ん?大丈夫、だよね?
でも今日初対面のはずの男の子だし、軽く説明されたものの信じられないことばかりだったし、結局志緒の正体も分かってないし…。
「湖宵様?」
「……私は貴方のことを信じてもいいんでしょうか?」
「ふっ、それを私に言いますか」
「あっ、ごめんなさい!」
本人に向かって言ってしまったことは失礼だと慌てる。
それでも千賀さんは笑顔を崩すことなく簡単に許してくれた。
「千賀」
「失礼致しました、お送り致します」
「湖宵もその可愛さを誰にでも振り撒くと僕が嫉妬するからやめて?」
ほぇ?
特に可愛さを振り撒いた覚えはないどころか、振り撒くほどの可愛さを持ち合わせていない。
首を傾げると困ったように志緒は笑うだけ。
よく分からなかったので気にせずに車に乗り込んだ。座席は今朝と同様に乗り心地が良く、自然と背筋が伸びる。