眠り姫は王子に愛される
「やだ、恥ずかしい…!」
「恥ずかしい?」
「同じベッドに入ってるなんて…」
「でも今日からここで2人で寝るよ?」
「拒否権発動!」
御堂さんには、わがままに付き合うよう言われたけれど、布団の中で顔を見合わせて拒んでみる。
薄暗い布団の中では、しっかりと顔が見えないけれど、何だか落ち込んだ空気を感じる。
「ヤダ」
「私もヤダ」
2人して駄々を捏ねる。むぅ、と膨らませた頬を優しく撫でるのに、志緒は折れてくれない。
今朝から、多少強引に事が進んでいるとは思ったけれど、私が嫌がることは聞いてくれる。
なのに、今回はお互いに引かない。
「僕が何のために頑張ってきたと思ってるの?」
「え?」
「湖宵と一緒に暮らすためだし、湖宵と一緒のベッドで寝るためだよ」
暗い視界の中で、真っ直ぐに射抜かれてたじろぐ。
─── 志緒は、私のことをどれほど知っているのだろう?
「何もしないから、お願い」
不敵に意思を曲げない瞳に、心の柔い部分が小さく疼いて、気付けば。
「わかった…」
こくり、確かに頷いていた。