眠り姫は王子に愛される
その返答を見逃さない彼は、ふわり、蕩けそうな笑顔を隠すことなく私だけに向けて。ずっと赤かった私の顔をいとも簡単にさらに紅く染め上げる。
どきどきと煩い鼓動を鎮めようと目を逸らしたら、志緒は優しく私を抱き込んだ。
「なーに、よそ見してるの?」
「うぅっ…だって志緒が、」
「僕?」
「志緒の笑顔を見ると心臓が苦しくて…っ」
笑顔を見るだけじゃなくて、今の状態も心拍数が漏れ聞こえていそうで、さらに恥ずかしくなる。逃げたいのに、ジタバタ足を動かすと、少し強く抱きしめられて志緒の香りが強くなった。
恥ずかしくて、どうしたらいいのか分からなくて、だんだんと息も苦しくなって。
「可愛いね、湖宵は」
「し、お…」
「え、湖宵!?」
でも、途切れる寸前の意識の中で、頭を過ったのは、
——— 志緒に包まれることは嫌いじゃないなあ。
夢に堕ちる瞬間まで、優しい温もりに包まれているのは何だか懐かしくて。きっと、私も温もりと同じ優しい寝顔をしていただろう。