眠り姫は王子に愛される
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「……ん、」
「湖宵っ?」
すぅ、と鼻腔を擽る甘い香りに意識が浮上する。このまま目を開けたくないと思いつつ、漂う香りに酔いしれてだんだんと思考がはっきりしてくる。
「、湖宵」
ああ、でも、私は夢の中が1番好きなのに。
「こーよーいー」
なのに、夢と現の狭間の中で聞こえる声は、私を夢の中から引きずり出そうとする。
どうして、眠ることはいけないこと?
「お姫様、起きないと食べちゃうよ」
不思議な誘いに朧気ながら、重たい瞼を持ち上げる。
「おはよう、湖宵」
「志緒…おはよぅ…」
「大丈夫?苦しかったよね、ごめんね」
「??」
寝惚けているせいかな、志緒が焦っているように見えるのは。
ふにゃり、笑って志緒に向かって手を伸ばす。そっと握られた手は指が絡んで温かい。手を握った志緒は安心して脱力したのか、ベッドの横に座り込んだ。
「目が覚めなかったらどうしようかと」
「……寝てただけだよ?」
「違う。湖宵は布団の中で酸素が薄くなって、気絶したんだよ」
その言葉に一気に脳内がクリアになり、ぱちり、瞬きを1つ落とすと驚きで固まる。