眠り姫は王子に愛される
志緒の言っている意味が分からなくてこてん、首を傾げる。だけど、今度は王子様のような笑顔をたずさえて、
「湖宵は何をしても可愛いね」
と嘯かれた。
今日は人生で1番可愛いと言われたに違いない。今まで生きてきて言われた回数よりも多いかもしれない。
思い返してみれば、私には似合わないセリフ、大きくてふかふかのベッド、広いお部屋と可愛いクッキー。全部が現実味を帯びなくて、未だ夢の中のようにふわふわとする。
「今日のは全部夢?」
「夢みたいに幸せだけど、僕が願っていた現実だよ」
志緒はぺろり、口元についていたクッキーの欠片を舌で取った。
「わわっ」
「湖宵も幸せ?」
「う、うん…」
戸惑うことばかりだったけれど、嫌な出来事は何一つなかった。寧ろ、お姫様のように甘やかされてふわふわするくらい幸せだった。
寝ることが大好きなのは変わらないけれど、起きていても夢を見ているような。
1日の出来事を思い返して、ふふ、と笑みが零れた。
「志緒、迎えに来てくれてありがとう」
真っ直ぐに見つめる瞳に目を合わせて伝える。志緒が迎えに来てくれなければ、こんな幸せは経験できなかったから。
志緒は優しく微笑んで、
「これからよろしくね。湖宵」