眠り姫は王子に愛される





「眠り姫はキスをしたら目覚めるかな」



キス…?
そっか、物語のお姫様は、王子様にキスをされて目が覚めるんだ。


ということは、これも夢。


そっ、と触れた柔らかい感触は初めてのもので。唇が温かくなる夢見心地。



「ふふ、今日はいい夢が見れた」

「夢?」

「だから起きたくないなあ」

「でももう、おはようの時間だよ」



夢の中なのに、目を覚まそうとして来る王子様。
目が覚めたらもう会えないのに。


いやいや、と小さく首を振って、夢にしがみ付こうとする。私を揺さぶる腕を捕まえて、覚めないように抱き着いてみた。



「湖宵」

「やだ寝るー」

「…何されても知らないよ」



突如低くなった声。
加えて恐ろしい雰囲気を感じて、幸せだったはずの夢に不穏が陰る。


一気に夢から覚めたくなって。


パチリ、漸く目を開いた。



「おはよう」



視界に真っ先に飛び込んできたのは、太陽の光よりも眩しいくらいに格好良い王子様。



「だれ……?」




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