眠り姫は王子に愛される
帰ると普段はお茶の用意がされていて、志緒とのんびり味わいながらお喋りした後、夕食まで眠る。けれど今日は流石に反省したので、早々に切り上げて机に向かった。
集中さえできれば時間を忘れて取り組むことが出来る。これは今までテスト前日にギリギリの状態で勉強している精神と似ていた。
明日がテストではないけれど、せめて志緒が居なくても今日の復習と明日からの予習を自力でこなせるくらいにならなければ、あの学校に、あのクラスに、志緒の隣に、立つことが許されない気がした。
一緒に居られないことを考えると寂しくて、焦りで勉強に追われる。
それでも1人ではどうしても詰まってしまい、結局千賀さんに教わりつつ勉強する。
漸く予習が終わりそうなところで。
「ただいま」
「あ、おかえりなさい!」
志緒が帰って来た。玄関に行くよりも先にこちらに顔を出したので、座ったままお迎え。
「……」
「志緒?どうしたの?」
「おかえりって、いいね」
「? そうなの?」
口元を手で隠しているけれど、赤くなっている顔は全然隠せていない。どうして照れているのか分からないけれど、何かお気に召したらしい。
嬉しそうに微笑む彼は、いつもよりもキラキラして見えるから目に眩しい。イケメン狡い。