眠り姫は王子に愛される
「毎日言ってよ奥さん」
「え、奥さん…?わ、私?」
「早く結婚しよ、可愛いね」
「え、え、何!?」
座っている私の後ろに回り、ぎゅっ、と抱きしめられる。
志緒のテンションについて行けずに慌てるばかり。お仕事してきて疲れているはずなのに、どうしていつもよりも元気なのか。
いつもの体温に安心しながら、どきどきもする心臓を治めていると。
「ところで湖宵、」
「なあに?」
「どうして千賀と2人なの?」
「ふぇ?」
後ろからただならぬ気配を感じて、後ろを振り向くことができない。純粋に疑問を投げかけられているはずが、とても怒っているように聞こえて、抱きしめられながら身が縮こまる。
ちらり、千賀さんに目を向けても、呆れた視線を志緒に返すだけで全く動揺した様子がないので、どうしたらいいか分からない。