眠り姫は王子に愛される
「怒ってる?」
「悲しいの」
「…うん、ごめんね」
「ねえ、志緒…」
「何?」
「どうして入って来てくれないの?」
ノックされたものの、そのままドア越しに会話を始めた志緒の顔はまだ見られない。
入ってきてくれるとばかり思って、急いで涙を拭ったのに。
志緒と話せただけでぴたり、止まった涙。
でもドア越しの会話だけでは、寂しさも悲しさも溶かしてくれない。
表情は見えないけれど、戸惑っている空気は感じられた。志緒は志緒で反省しているのが伝わって来て、より早く部屋に入ってきて欲しい気持ちが募る。
「志緒に抱きしめてもらいたいよ…」
ぽつり、広い部屋に響いた切ない声は扉の向こうにも聞こえたらしく、言い終わるや否や慌ただしく開かれる。
さっきよりも強く、苦しくて息ができないほどに抱きしめられて、止まったはずの涙が再び。