眠り姫は王子に愛される
「こーよーい」
「むぅ…」
撮影で散々振り回されたことに対してというより、眠気が限界の中歩かされていることに不機嫌な私。
隣で歩く志緒に話しかけられてもその感情を全面に表情に出す。
さっきの撮影では必死に我慢していた不機嫌を全て志緒にぶつけるのは理不尽な気もするけれど、そもそも百合ちゃんのお誘いを了承したのは志緒で。
私はそれに付き合わされた形。
うん、やっぱり志緒に怒っても問題ないや。
「ふふ、怒っても可愛いね」
今にも眠ってしまいたい中、必死に顔を顰めることで眠気を覚まそうとしながら歩いているのに、怒りをぶつけられても志緒は私に可愛いという。
もう意味が分からない。
私が泣いたって、怒ったって、眠ったって、勿論笑っても、志緒は私に王子様のようなキラキラを纏った微笑みを崩さない。
私ばかりがこんなに百面相を晒してしまっている。
なのに、全てに可愛いと褒めたたえては、私をお姫様と呼び、実際に今までにされたことの無いくらいに大事に扱ってくれる。
何でもしてくれるからわがままになっていきそうで怖いくらいに。
「頑張ったご褒美にどこか寄る?」