眠り姫は王子に愛される





「志緒、私が眠いの分かっててそれ言うの?」

「湖宵とデートって初めてだし」



デート…?これはデートだったの?


百合ちゃんの撮影に勝手に協力することになっただけで、一緒に外を歩くのは、スタジオを出た今だけなのに?(行きは当然車での送迎。)


疑問符を浮かべる私を気にすることなく、いつも以上に楽しそうに歩く志緒は足が長くて飛んでいきそう。


うぅ…、デートかぁ…。
そう表現されると何だか恥ずかしくなってくる。


志緒の隣を歩くのに相応しいかどうかは常に考えるけれど、今はそれに加えて恋人らしく見えるのだろうか、なんてことまで。


———恋人じゃないのに。


浮かれ気分が伝染してしまったようで、歩く姿勢にも気が引き締まる。

不機嫌な顔をしたまま歩いていたら生意気だと周りから思われかねないので、表情も眠気に負けないようにキリっと構える。


と、目の前に現れたのは前から気になっていたカフェ。



「わぁっ!おしゃれ!」



外装からおしゃれなカフェは、SNSで見かけてから密かに気になっていた。
場所もぼんやりとしか把握していなかったけれどまさか今日、偶然巡り合えるなんて。



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