眠り姫は王子に愛される
「ねえねえ」
男の人に声を掛けられた。
「はい」
「今時間ある?」
「えっと、人を待ってて…」
ちらり、レジに並ぶ志緒に視線を向ける。あと1人というところ。
せっかく並んでもらった列をわざわざ抜けてもらうことが申し訳なくて呼ぶのをやめた。
「あ、あの店で並んでるの?」
「はい」
「じゃあその子も一緒に俺の友達と遊ばない?」
「遠慮します」
「いやいや、全然危ないこととかないからさ!」
危ない危なくない以前の問題で、私はチーズミルクティを飲みながら速やかにお家に帰りたいのです。
睡魔が限界で今にも瞼が落ちそうな中、歩いていたというのに遊びに行ける元気なんて余っていない。
「ごめんなさい、もう眠くて…」
「眠いの?遊べば目も覚めるよ」
「えっと、ごめんなさい」
「そんなこと言わずにさ、君可愛いから遊びたいんだよねー」
志緒と一緒だったから、眠くても楽しい気分があってお喋りも弾んだのに、今はちっとも楽しくない。
楽しくないことに脳を働かせる気力が無いらしく、可愛いカフェを見つけて吹き飛んだはずの睡魔が襲って来て、急激に眠い。
今ここで寝てしまってもおかしくない。
どうしよう、志緒、早く来て…。