眠り姫は王子に愛される
「と、とりあえず!準備するから部屋から出て!」
慌ててキスのムードなんて忘れて、せめて寝癖くらいは整えねばと身体を起こす。朝からこんなに俊敏に動くのは何年ぶりだろう。
「準備手伝うよ」
「いい…っ!」
着替えるところを見られているなんて御免だ。
「じゃあこの制服に着替えてね」
手渡された制服は名門校と名高い私立高校のもの。
ブラウンのブレザーは細かく千鳥格子模様が入っていて、薄ピンクのシャツに赤を貴重にしたチェックのリボン、そしてブレザーとおなじブラウンとグレーチェックのプリーツスカート。
「可愛い…!」
とても制服が可愛いことでも有名な、お金持ちがほとんどと噂の学校。
でも、どうして私はこの制服を着るの?
頭に疑問符を浮かべたまま志緒を見上げると、
「湖宵は今日からこの学校に転入するんだよ」
さらっと爆弾発言を受けた。
「無理無理無理!」
確かに制服は可愛くて、女の子なら誰でも一度は憧れるけれど。
私のような一般人が軽々しく入れる学校ではないはず。
「もう決定事項だから。早くしないと遅刻するよ?」
容赦ない言葉で焦らせるので、仕方なく着替えることに。