眠り姫は王子に愛される





———じゃあ、私たちの関係は何と言い表せばいいのだろう。


そうか、これが分からないから上手く言い返すこともできなくてモヤモヤしていたのか。


漸く自分の気持ちが分かったことにすっきりして、でも解決はしていないことに複雑になる。



「ねえ志緒」

「ん?」



———私たちの関係って何?



訊きたいけれど、さっき否定した中のどれを言われることも嫌で。



「チーズミルクティぬるくなっちゃった」

「うちのメイドの方が美味しいの淹れてくれるよ」



結局、誤魔化してしまった。


恋人なんて夢物語だけれど、決められた関係だから結婚するんじゃなくて、ちゃんと志緒のことを知って、好きになりたい。

思えば最初から信頼しきっていた上に、もう随分と距離は縮まって、この近さが嫌じゃなくなるくらいには心を許している。


まだ恥ずかしさはあるけれど、というかこの恥ずかしさが消える予感はないけれど。


近くに志緒の温もりと香りがあることには安心すら覚えるようになってきている。

だから、好きになりたいというよりも、もうすぐ好きになる、という予感がした。




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