眠り姫は王子に愛される
「湖宵ちゃん、おはよう」
「百合ちゃん、おはよう~」
朝から上品な笑顔とともに、前の席に座っていた彼女は後ろを振り返る。
見返り美人とはきっとこのことだと眠気が抜けず働かない頭でぼんやり思う。それくらいに百合ちゃんは美しい。
だから、美しさゆえに発言にはバラの如く危ない棘を含んでいることも。
「湖宵ちゃんはこの学校の七不思議知ってる?」
「……それは怖い話?」
「怖くないよ」
「じゃあ知らない」
ホラージャンル全般が苦手なので、怖い話をされるのであれば知っているふりをして過ごそうと思っていた。
どの学校にもよくある七不思議。歴史ある名門の学校だから7つで収まる程度しかないのが不思議なくらいだ。
そして、私はこの時知らないと簡単に言ってしまったことを後悔することになる。
「ふふ、じゃあ教えてあげるね」
百合ちゃんが聖母のような清廉潔白な笑顔を浮かべて教えてくれた話は。