眠り姫は王子に愛される
「———っていうお話」
「…」
「湖宵ちゃん?」
「ゆ、りちゃん…の、ばかぁ…」
「あれ?怖かった?」
人一倍怪談なるものが苦手な人間が聞いていい話ではないことは確かだった。そもそも、七不思議と聞いて怖い話がないはずがなかった。
百合ちゃんが話し終える頃には魂が飛んで行かないように必死で話が頭に入っていない。最早自分との闘いだった。
そんな私を見て変わらず綺麗に微笑む百合ちゃんは、怖い話なんてなかったように何事もなくいつも通り。
「震えてる湖宵ちゃん可愛いね」なんて、志緒みたいなことを言い出す始末。
そんな怖い話を聞いていたらチャイムが鳴り、あっという間に授業が始まる。
逃れられたのは幸いにしても、今日は眠っても悪夢にうなされそうな予感がして全く眠れなかった。
真面目に授業を受ける様子を隣で志緒は少し不思議そうに、でも結局楽しそうに見ていた。
理由を聞くと「一緒に授業を受けられることが嬉しいのと、可愛い横顔が見られるから」だそうで。志緒はやっぱり今日も変だ。