眠り姫は王子に愛される
急ぎ足で向かうけれど、なかなかたどり着けないところに焦りを感じる。
昇降口が閉ざされている今、裏口から入るので普段よりも遠回り。
どうして今日に限って、七不思議なんて聞いてしまったのだろう。どうして今日に限って教科書を忘れてしまったのだろう。
百合ちゃんの美しく、綺麗で、それゆえに怖い話も誰よりも似合ってしまう声が脳裏を過る。
—— 七不思議の1つ目はね、夜になると下駄箱の列が1列多くなってるんだって
数えちゃダメ、自分の靴を履いたら速攻離れる。
好奇心で数えるから勝手に増えちゃうんだ。
触らぬ神に祟りなしとも言うし、妙な行動力は見せてはいけない。
—— 2つ目は、階段が1段増えるの
こういう時は、1段飛ばしで駆け上がろう。
ここに転校してからそんなお転婆なお嬢様は1人も居なかったけれど、今は誰も見ていないから咎められることもない。何より怖い。
元々階段が何段あるかも知らないけれど、疑心暗鬼になるからとにかく振り払いたかった。