眠り姫は王子に愛される
—— 3つ目、踊り場に異様に大きい影が映って
違う、きっとそれは自分の影。
よく分からないけれど光の屈折とか何とかで、きっと。
物理の公式を頭に思い浮かべながら、七不思議と言う名の怪談を追い払いたいのに、何故か共存しているせいで、私の脳内がパンクを起こしそう。
このままだと数学の公式まで現れそうなので、どうにかお帰り頂きたい。
—— 4つ目、窓に白い何かが横切るらしいよ
それは、えっと、多分流れ星。
そう、きっと見れた人は実は運がいいんだ。きっと、そうだ。
現に視界の端で窓に何かが横切ったような気がしたので、無理矢理ポジティブ思考に転じてやり過ごす。
流れ星だと信じてお祈りしよう。
怖いことが起きませんように。
無事に学校から出られますように。
七不思議がただの噂でありますように。
—— 5つ目、目的地の扉が異常に冷たいみたい
漸く教室に辿り着く。
息を呑んで恐る恐る扉に手をかけるが、異常に冷たいなんてことはなく、少しだけ安心して教室に入る。
普段よりも急いだのにとても長い道のりに感じたし、疲労感が強い。
目的の化学の教科書を手に取り、ひとまず心を落ち着かせようと深呼吸をする。