眠り姫は王子に愛される
——最後に7つ目は、声が聞こえるの。しかも段々大きくなって、自分の名前を呼ぶんだって
結局のところ、私は何も目撃していないし、聞いてもいない。
教室での奇怪な現象は私のせいだし、窓に何かが横切ったことは流れ星だと信じて思い過ごしている。
七不思議は今のところ迷信。迷信だから面白いのだ。
私のような本気で怖がる人を驚かせるようとするほど、幽霊だって暇でも意地悪でもない。多分。
それでも、この足だけは止めてしまえば、もう立ち上がることすらできなくなりそうなので足が縺れて、転びそうになりながらも、必死で走り続ける。
体育の授業でもこんなに走らないので息が切れて、肺が痛くて、足の感覚もおかしくなっている。
涙目で走るので、視界が涙で揺れてぼやけている。
漸く下駄箱まで戻って来て、靴を履き替えながら再び落ち着こうと深呼吸をしようとする。
しかし息が切れているため、整えるだけで精いっぱい。
1人、下駄箱に手をつき、電気のつかない真っ暗な空間で佇んでいると。