眠り姫は王子に愛される
「………ーー」
「?」
今、微かに声が聞こえたような。
七不思議の最後が頭に流れ込んできて、何度も何度もリピートされる。
そして、話をなぞるように少しずつ声が大きくなってくる。
逃げたいのに、教科書とローファーを落とさないようにするだけで震える手も、脚も、全く動き出してはくれない。
そしてとうとう。
「……よい、こよいー?」
「!」
自分の名前が呼ばれて、動かなかった脚はそのまま力を失って、下にうずくまることしかできない。
やだ、どうして、探さないで、見つけないで———…
「あ、いた」
「っっ、!」
願いも空しく、隠れてもいない私は簡単に見つかってしまったようだ。
見つかったらどうなるんだろう、その先の話なんて聞こえていなかった。
声すら出せずにただ震えるだけで顔も上げられない私の頭を、見つけた誰かが優しく撫ぜる。