眠り姫は王子に愛される
「はぁ…、怖かったぁ」
「よしよし、頑張ったね」
「うん…頑張った…」
「言ってくれたら代わりに取りに行ったのに」
「忙しいのにこんな雑用押し付けないよ」
眉を下げて困ったように笑う彼に、「お疲れ様」と労うと、「別に忙しくないよ」と返された。
嘘、そんなわけない。
こんなに空が暗くなって、昇降口が閉まってもまだ、校内に居るのに忙しくないはずがない。
会社にだって通っているのに、正式に生徒会長になり、新たなお仕事までこなし、かつ成績だってトップをキープし続ける。
そして志緒は私を甘やかして構うことも忘れない。
私は勉強だけで手いっぱいで、それも漸く楽しいと思えるようになって捗るようになったくらい。
志緒は愚痴も言わずに責任感を背負って、何一つ手を抜かずに完璧にこなすから、さらに期待がかかる。
せめてもの労いに頭を撫で返すと、少し呆然とした後、はにかんだようにいつもよりも可愛く笑っていた。
王子様のような爽やかな笑顔じゃなくて、褒められた子どもみたいな。