眠り姫は王子に愛される
「とりあえず帰ろうか」
「きゃっ」
「ちゃんと掴まってね、あとそれ落とさないでね」
むむむ、と志緒の多忙さに想像ができないなりに考えを巡らせていると、知らぬ間に眉間にしわを寄せていたらしい。
志緒が「可愛いね」と口癖を笑いながら呟いて、眉間を撫でてくれた。
指に魔法でもかかっているのか、触れられた途端に目の力が抜けて、強張っていた顔も元通り。
それに頷いた彼は、流れる様に私の膝裏と背中に腕を回し入れ、軽々と持ち上げた。
驚きで、折角掴んだ教科書とローファーを再び離しかける。
だって、これはいわゆるお姫様抱っこというやつで…!
初めての浮遊感に咄嗟にしがみついた腕に力が籠る。
あまり強くすると志緒の首を絞めそうだけれど、既に手に持ったローファーは志緒が歩く度に反動で揺れて頭に当たっていて申し訳なくなる。
顔を上げると至近距離に整った顔が映るので、目がチカチカして胸に顔をうずめて目を瞑ってゆらゆらと身を委ねた。
暴れて落とされると、私が痛い思いをするので、大人しくすることに。