眠り姫は王子に愛される
1人慌てふためいたものの、急いで制服に着替えて髪を整えているうちに今朝の夢か現か定かでない状況を考えることを忘れてしまった。
トントン、軽やかに階段を降りた先のリビングには。
「おはよう、湖宵」
「おはよ、お母さん」
いつもと変わらず母親の姿。
テーブルには既に朝食が用意されている。けれど、
「志緒も朝ご飯?」
「朝食は取ってきたからコーヒーだけ頂いてるよ。美味しいね」
「あら、志緒くんありがとう~」
何の違和感もなさそうに、にこやかに会話をする志緒と私の母。どうして?
私だけがこんなに混乱していて、でも誰も状況説明をしてくれなくて。
結局、遅刻すると急かされたので、頭の中の疑問を何一つ解消出来ないまま朝食もそこそこに学校へ行くことに。
と、玄関を出た先には。
「な、何これ…」
何と、見るからに高級そうな長い黒い車。車種には詳しくないけれど、多分リムジン。
目にしたのは初めてなのに、志緒は平然とした様子で車に近付いていく。
え、これは志緒の車なの…?
また1つ疑問が増えたところで、志緒が手招きをした。
「湖宵、おいで」