眠り姫は王子に愛される
「湖宵は僕だけのお姫様だから、幽霊なんかに連れ去られるわけにはいかない」
「…志緒だけのお姫様?」
「そう、僕のもの」
「だから私は物じゃない!」
今、一瞬どこかの思い出が甦りそうな気配がしたけれど、結局思い出せず歯痒い。
いつか夢で見たのだろうか、それとも小さい頃の思い出?何だったのだろう?
掴めそうでするり、抜けた小さなヒントを追いかけて思い巡らせるうちに家に到着。
「ね、ねえ志緒!もう歩けるから!」
「んー、もうちょっとお世話したいからダメ」
「何言ってるの!?」
車を降りようと足を伸ばした瞬間に、志緒に抱きかかえられて、再びお姫様抱っこの状態で部屋まで連れられた。
全く聞き入れてくれない志緒との格闘と、お姫様抱っこの揺れで落とされないようにしがみ付くことに必死で、部屋に着く頃には小さなヒントはすっかり頭から消え去っていた。
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そして、もうすっかり慣れたおやすみの時間。
志緒と同じベッドで眠ることに最初の1週間ほどは抵抗があったものの、今ではふかふかのお布団が最高なら何でもいいか、と諦めの境地。