眠り姫は王子に愛される
夢心地のままではいられない
「……志緒?」
ぽつり、呟いた言葉は1人の部屋に寂しく消える。
余韻も残さない声と同様に、隣で眠っていたはずの温もりは消え去って、私1人分だけの温さが布団を占めていた。
冷たい隣のシーツに手を伸ばし、志緒が眠っているはずのスペースをそっ、と撫ぜる。
手に冷たさが伝わって、夢じゃないことを物語っていた。
眠れないことよりも、志緒が居ないことが気になって、1人で寝るには大きすぎるベッドから抜け出した。
寝室から繋がっている志緒の部屋の扉をノックするけれど、私を起こさないように気を遣ったのか部屋から物音がしない。
返事がないので、近くに居ないことに更に不安が募る。
時刻は深夜の2時。
こんな時間に起きることなんて初めてかもしれない。
それでも、寝付けそうにないので志緒を探すために広すぎるお屋敷の中を廻ることにした。
広すぎるお屋敷を1人で歩き回ることは日中でもほとんどない。
いつもは誰かが一緒に居てくれるのだと初めて気付いた。
「あら、湖宵様いかがなさいました?」
「あ…御堂さん」
声をかけられて驚く。
深夜でも変わらず疲れた様子がない御堂さんに悪夢での疲労が少し和らいだ。