眠り姫は王子に愛される
「…(どうしよう)」
「ん?誰か……あれ、湖宵?」
黙って見つめて佇む私の気配を何故か感じ取って、声をかけるよりも先に志緒が振り返った。
落ち着いた様子の彼は私が居ることに少しだけ首を傾げたものの、すぐに立ち上がり近付いてくる。そして、頭を抱えて抱き寄せた。
「どうしたの?こんな時間に起きるなんて珍しいね」
「……怖い夢、見ちゃって」
「今日のこと引きずってるんだ」
「うん……志緒が一緒だったら大丈夫って思ってたのに、起きたら居ないから、眠れなくて、あの…」
すっかり慣れた温度に包まれながらしどろもどろ。伝えたいことはあるのに、それは志緒の邪魔になるからなかなか言い出せない。
「ん、一緒に寝ようか」
「……でも、迷惑じゃない?」
「何が?」
「お仕事、してるんでしょ?私が怖がりじゃなかったら、1人で寝られたら、志緒に迷惑かけないのに…」
志緒の裾をきゅ、と控えめに握る。それでも、私は怖がりだし、怖い夢を見たから志緒が居ないと今夜はもう眠れる気がしない。
目が覚めた時、1人分の体温しかないことにこんなに不安を覚えたことはなかった。