眠り姫は王子に愛される
「こんな時間まで仕事する方が良くないし、急ぎじゃないから平気だよ」
「……ごめんなさい」
「謝る必要なんてないよ。寧ろ呼びに来てくれてありがとう」
「ちょうど一区切りついたよ」と絶対にそんなことないのに、優しい理由を付けてくれる。
おかげで、私はまた志緒の優しさに付け込んでしまうのだ。
早々に資料を片付ける志緒は、その間も私の手を握って離さない。邪魔になるから離そうとしたら拒まれたので、空いている片手で片付けを手伝う。
そして、部屋を出る頃には何故かお姫様抱っこで寝室まで運ばれる流れになっていた。
「志緒、歩けるよ?」
「僕が離したくないの」
「うぅ…、じゃあ私も離さないよ」
「相当怖いんだね」
恥ずかしいけれど、志緒の体温が近くにあることはやっぱり安心する。
きゅ、と胸元の布を掴んで首元に擦り寄ると、ちゅ、と小さく鼻に口付けられた。
まだ相当怯えているのかもしれない。
安心させるように落ちた口付けに、羞恥心よりも幸福感が勝ることに驚いた。
口元がゆるゆると上がり、首元で小さく微笑む。