眠り姫は王子に愛される





突然のことばかりで現状把握はしていないけれど、志緒について行くことしかできないことだけは理解しているので、手招きをする彼の元に恐る恐る近寄ってみる。



「何?」

「湖宵も早く」

「こ、この車に乗るの?」

「勿論」



それ以外に手段がないとでも言うように、当然のように頷かれてしまった。


とはいえ、勝手に1人で乗り込む勇気もなくてオロオロしていると、持っていたスクールバッグを簡単に攫われ、左手をそっと掬われる。
手の甲にまた1つ、口付けてから車に誘われ、気付けば腰を下ろしていた。



「え!?」

「じゃあ行こうか」



志緒の一言で発進してしまった車は自宅から遠ざかっていく。ああ…できることならもう一度お家のベッドで眠り直して現実をやり直したい。



「志緒ぉ…本当に私も行くの?」

「湖宵は今日からずっと僕と一緒に居るんだから当然」



落ち着けるはずもない広い車内で、スカートを握り締めてきょろきょろと辺りを見回すことしかできない私に対して、慣れたように寛ぐ志緒。


今になって気付いたけれど、志緒も今日から私が通うらしい高校の制服を着ている。
男子はシャツの色が水色で、ネクタイがブルーを基調とされている。お洒落な制服が志緒とマッチしていて、隣に居るのが恥ずかしくなるくらい志緒の格好良さを更に引き出していた。




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