眠り姫は王子に愛される





疑問形だったので、向こうも私の顔をしっかり知らないのだろう。


目が合った瞬間、露骨に嫌な顔をされてしまった。
話したことの無い人に嫌われるのは流石に初めての経験で悲しい。



「はい、そうです」



お淑やかな笑みを携えて、お嬢様の威厳を見せつける様にまだ何も話していないのに怖気付きそう。

私には一生かかってもこのオーラを醸し出すことは難しそうだ。見習いたい。



「本日は久住志緒様はいらっしゃらないのですわね」

「志緒にご用事ですか?」

「いいえ、ただの確認ですわ」



にこり、お人形のように狂いなく綺麗に整った笑顔にも威圧を感じて、何もされていないのに委縮してしまいそう。


何故か逃げ出したくなって無意識に百合ちゃんの袖を引いていた。


少しずつ百合ちゃんの陰に隠れようとするあたりの狡さが私の弱さだ。

隣の百合ちゃんはいつもと変わらぬ(少しだけ対抗するように圧はある)綺麗な笑顔を称えているというのに。

美人同士が向かい合う構図に私が加わることでアンバランスな不具合が生じてしまうのは、私自身ではどうにもできない話。




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