眠り姫は王子に愛される
「天瀬さんに用事がございますの。少しお話を聞いていただけないかしら?」
堂々とした立ち振る舞いで有無を言わせない迫力に自分でも知らないうちに頷いていた。
百合ちゃんはそれを阻止しようとしていたけれど、私が頷いただけに後には戻れない。
私も別に見知らぬ人と2人きりで話したいわけじゃないし、この威圧感に1人で耐えられるか不安しかない。
百合ちゃんの袖をきつく掴んで皺になってしまったことを謝ってから、お人形のように綺麗な薔薇が良く似合う彼女について行った。
歩き方1つを取っても、背筋を伸ばし何にも恐れを感じないような姿は凛々しく映る。
一方の私は、なぜ自分が指名されたのか理解できないままで不安で一歩が重く、少しの距離なのに歩く間に差が開いていた。
「天瀬湖宵さん」
一言にも重圧感と高貴さを感じる。
自分の名前を呼ばれただけなのに、必死に伸ばした背筋に寒気が走った。