眠り姫は王子に愛される
「貴女は志緒様の婚約者だとお聞きしましたが、貴方のお家は志緒様に相応しい家柄なのですか?」
「……えっと、」
「私の知る限りでは、本来はうちへ入学される立場にもないのでは?」
「……」
「そんな方が、久住グループの代表を共に担っていく立場として相応しいとお思いですか?」
「……」
「単刀直入に申し上げます。私に志緒様のお隣をお譲りいただけませんか?」
淡々と私に向かって発せられる言葉たちが突き刺さる。何一つ答えられず、会話として成立はしていない。
しかし、相手も私の返答は不要らしい。
これは、会話でも相談でも提案でもなく、彼女にとっては既に決められていることなのだ。
お人形のような綺麗な笑顔が一変、真剣な表情に変わると薔薇の棘に刺されたように痛い。
向き合うだけでも足が震えそうで、怯えないように真剣な眼差しを返すだけで精いっぱいだ。
きっと、ここで怯んだら相応しくないと判断されてしまう。