眠り姫は王子に愛される
まだ志緒がどれほど大きなものを抱えているかは知らないけれど、私は今の場所がとても心地よくて、離れたくないと思っているから。
今にも睨んでしまいそうなほど必死で、何と答えたら正解なのか分からない。
ただ、不安で灰色に濁った靄が心を蝕んでいく感覚で、今何かを言い出そうとしても、弱気な発言しか出て来ない。
頭に浮かぶのは、志緒が私ではない誰か綺麗な女の人と微笑みあっている姿。自分が自信を持って隣に居られる自信がないから、私自身が志緒の隣に居る想像ができない。
それがつまり答えなのだ。
「無言は肯定と捉えてもよろしくて?」
「……私は、「僕が湖宵じゃないとダメなので諦めていただけませんか?」
真っ白になった頭でとりあえず何かを言い返そうと目を合わせたその時、被さった穏やかだけれど意志の強い声に救われた。