眠り姫は王子に愛される
毎日聞いている、いつの間にか耳馴染みの良くなった安心するそれに縋りつきたくなったけれど、必死に震えないように向かい合う。
私に威圧的な態度を取っていた彼女は一変、慌てた様子を見せながらよく分からない言い訳を呟きながら瞬時に立ち去って行った。
姿が見えなくなって、漸く一息つく。
それと同時に優しい温度に包まれて、改めて自分が甘やかされていることを自覚した。
「……志緒、?」
「ごめんね、来るのが遅くて」
ぎゅっと抱きしめられて、身長差により包まれている状態で志緒の顔は確認できない。
けれど、すごく落ち込んだように話す声に心が痛んだ。
志緒は何も悪くなくて、寧ろ何も返せない私を守ってくれた。
それなのに、自分のせいにする志緒に申し訳なさが立たない。
そもそも、百合ちゃんに引き留められたのに、のこのことついて来た私に全面的に非がある。
私が志緒の傍に居ることで注目を浴びていることは知っていたけれど、志緒の隣は平然と与えられていい場所ではないことは知らなかった。
こうして初めて形になってからじゃないと気付けない。
甘やかされていると日々感じるのに、私が知らないところでもきっとたくさんそれはある。